JR上野駅の15番線ホームに設置されている、石川啄木の歌碑。
古くから上野駅は「北(東北)の玄関口」とも言われ、夜行列車の終着駅(あるいは始発駅)として、多くの上京者にとって故郷に繋がるひとつの郷愁の場でもありました。岩手出身の啄木もまた、この場でふるさとを想っていたのでしょう。そして昭和30年代にはいわゆる地方からの集団就職者が東京の地に足を踏み入れる場として、このホームはさらに特別な終着駅としての役割を増していきました。
やがて時代は巡り。1982年の東北新幹線開通、その3年後には上野駅まで延伸したことを機に少しずつこのホームの役割も変遷していきます。決定打はやはり1991年の上野駅から東京駅へのさらなる延伸。これにより上野駅は「北からの終着駅(あるいは北への始発駅)」ではなくなり、いち通過駅として平成の世を生きていくことになりました。
今やすっかり新宿駅や渋谷駅などと同じ、東京都内にある巨大ターミナル駅のひとつ、という印象ではありますが、それでも不思議と、他の駅にはないそこはかとなく漂うセンチメンタルな雰囲気が感じられます。
それは駅自体が、まるで生きているかのような。
原宿駅に代表されるように、あらゆる駅が昭和の記憶を失いつつある令和の世に、このセンチメンタルな寂寥感はいつまで残るのでしょうか。雑感。