日本に海外のファストファッションが上陸して話題になっていたころ、それとは真逆の価値観を僕に教えてくれたお店がありました。
2000年代前半、当時の古着ブームはアメカジ系の古着屋さんが中心で、どちらかというとヨーロッパ系の古着はまだマイノリティだった時代。渋谷のファイヤー通りから少し中に入った場所にあったショップ「Primal(プライマル)」は、王道とはちょっと違う、例えて言うならより「自由」で、「遊び心」があるセレクトをしているショップでした。
店頭に並んでいるどのアイテムも「新鮮」で、遊びに行くたび、オーナーのYさんが教えてくれる洋服の蘊蓄やカルチャー、買い付けのときの話などなど、毎回とても刺激的でした。いつも無難に黒の無地ばかり着ていた僕に「もっと遊びなよ!」と笑いながら話してくれるYさん。「ああ、ファッションって、こんなにも自由に愉しんでいいものなんだな」と気づかせてくれた、僕にとっては「遊び心」の師匠です。
Yさんはこれも当時では珍しく古着屋さん発信の完全オリジナル(リメイクとかではなく新作ブランド)をつくっていて、「NR.FLAG」というそのブランドにはYさんの「遊び心」がより色濃く出ていて、僕は大好きでした。思えば、人生で初めて「開襟シャツ」を買ったのも、NR.FLAG。
ボウリングシャツによくあるチェーンステッチの感じや、襟元にちょっとだけ入った刺繍、テロッとした生地感などがお気に入りで、クタクタになるまで着ていたのを思い出します。
残念ながら今はお店は閉じてしまったのですが、また久しぶりに「師匠」にいろんな話を聞きに行きたいなあ。