――あらゆるマニアの中で、最もジャンルが細分化されているのは「鉄道」である。
多趣味で有名な某警察官の方(葛飾区亀有公園前派出所勤務)も確かそんなことを言っていましたが、有名なところを挙げても、乗り鉄、撮り鉄、車両鉄、時刻表鉄、模型鉄、音鉄、文字鉄、葬式鉄、廃線鉄、…
とにかく細かく、奥深いのが「鉄」の世界。
ちなみに自分は「乗り鉄」に、「文字鉄」と「ノスタルジー鉄」を若干こじらせているのですが、先日訪れたおなじみ「鉄道マニアの聖地」、埼玉県大宮市の鉄道博物館で出逢ったこちらの車両は、その3つを満たすロマンに満ちていました。
1930年、昭和5年に製造された、特急「富士」の1等展望車。
純和風のレトロな内装は昨今のクルーズトレインの流行りにも通じますが、現代が高級志向な「ラグジュアリー」なら、こちらは随所に日本文化を感じさせる「リュクス」な趣。
今よりも時間の流れがゆるやかだった時代、移動する時間そのものを愉しむ贅沢、そんな鉄道旅本来の姿を伝えてくれるかのようです。
そしてこのヘッドマークのレトロな書体といったら!
「富士」の名は日本初の一般公募で決まった電車の名称で、戦後に特急電車で復活したのち、あのブルートレインの人気車両として再登場しました。
しかしそのブルトレも2009年に廃止され、夜汽車に揺られるあの独特の夢見心地な雰囲気は、クルーズトレインではもう味わうことのできない、失われつつある記憶。
こんな時代だからこそ、ブルトレに復活してほしいと思う日々。
いつの日か何代目かの「富士」に、今度は親子鉄として乗ってみたいものです。