若い時分、先輩方が「革製品は使い込むほどに味が出るんだ」「とにかく使いこんで、革を育てる感覚なんだよ」というのを聞いて、「おおー、いつかは自分も・・・!」と憧れを抱いていた。
とまあ、そんな青雲の志も忘れかけていた最近、身の回りのものを整理していると、、、
十年少し前か、渋谷にある革製品工房兼店舗の「Organ」さんで購入した、革の名刺入れ。
かつて毎日のように掌の中にいた彼は、少しの休息を経て、気づけば何ともいい感じの味わいに育った姿になっていました。
いつの間にか「育てて」いた、いや「育ってくれていた」というべきか・・・。
コロナ禍で名刺交換の場面が減り、いつの間にか鞄の中に眠っていたのをすっかり忘れていたよ!ごめん!
植物タンニン鞣しで仕上げられたイタリアンレザー。トスカーナ地方の伝統的製法で作られており、最初は油分が浸透しにくいのでわりとつるんとピカピカだが、そのぶん一回脂が浸透したら抜けにくいからずっと使っているといい色艶が出る・・・らしい。お店でそんな話を、聞いた記憶がうっすらと。
不思議なもので細かく入った小さな傷ですら、なんだかいとおしい。
これからまだまだ、十年、二十年と、よろしく頼むよ。