乗り鉄、というのはとにかく鉄道に「乗る」ことが目的なので、それ以外、例えば「早く目的地に着きたい」とか「観光したい(途中下車して駅舎や周辺風景を愉しむ、というのはありますが)」というのはとかく度外視しがちな生き物。なので鉄分が薄めの方が、濃い乗り鉄と一緒に旅行する際には注意が必要です(苦笑)。
さて、そんな乗り鉄の深い「業」を知ったうえでの、今回の「特急ひたち」のハナシです。
品川駅と仙台駅を結ぶ「特急ひたち」は、日中に走行する特急としては「特急にちりんシーガイア(博多駅-宮崎空港駅)」に次ぐ、日本で第2位の「始発から終点までの距離が長~い」電車になります(もちろん新幹線や「サンライズ出雲・瀬戸」などの夜行特急をのぞく)。
東京と仙台は当然ですが東北新幹線が通っているので、それに乗れば1時間半(「はやぶさ」の場合)ほどで着いてしまうのですが、こちらの「ひたち」はなんと4時間半を超える長旅!!
じゃあ、お値段がリーズナブルなんでしょうか・・・と思いきや、はやぶさの乗車券+指定席券が11,000~12,000円の間ぐらいなのに対し、ひたちは9,200~9,300円ほどと、2,000~3,000円ぐらいの差しかありません(それでもお得はお得ですが)。
早くもなく、安くもない。それでもこの「ひたち」が愛すべき理由は、あえて「4時間半かけて行く」というところにあります。
品川駅で特急に乗りこみ、まずは買ったばかりの駅弁を開け、ビールの缶をプシュッと・・・しばらく座席は「ひとり居酒屋状態」となり、1時間ほどすれば車窓はビル群から田園風景に。このあたりで酔いが回って眠くなり、そのままウトウト、、水戸のあたりを抜けると太平洋の大海原が見えてきます。そして、ぼーっと車窓を眺めているうちにまたウトウト。気づけばもう東北の地へ・・・。
とまあ、こんなふうにただひたすら、ある意味で「無為」な時間を過ごすことができる贅沢を、この「ひたちの4時間半」は我々に与えてくれるのです!!(力説)
もちろん新幹線も快適で良いですが、4時間半も乗りっぱなしとなると1万円じゃ利きません。逆に値段の安い各駅停車だと1時間も座っていればお尻が痛くなってくる(そもそも指定席じゃないので、お酒を飲むのも憚られます)。都内を走る在来線のグリーン車でもせいぜい片道2時間ほどが限界。そういう意味では絶妙にニッチなところを攻めている特急と言えるのです。
1日ぽっかり予定が空いたけど何もすることがない日、往復9時間を超える「壮大な暇つぶし」に、いかがでしょうか?