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「平成の名伯楽」と三十余年。~相撲部屋「看板」紀行 其の14 伊勢ヶ濱部屋

アバター画像2023.06.06 12:00

 東京メトロ半蔵門線の住吉駅から錦糸町方面に歩を進めて数分、夕暮れ時に散歩しているとまず気づかないのでは?というほどにさり気なく、経年変化を感じさせるややくすんだ風合いの木製の看板が掲げられていました。

 伊勢ヶ濱一門の総帥、「伊勢ヶ濱部屋(いせがはまべや)」。

 師匠である9代伊勢ヶ濱は、日馬富士と照ノ富士というふたりの横綱を育て上げた「平成の名伯楽」であり、同時に数多いる親方衆の中でもその指導の厳しさは有名です。そして親方の定年まであと数年となった今も、現役横綱を部屋頭に数多くの関取衆を抱える強豪部屋のひとつ。そんなザ・相撲部屋とは思えないほど、住宅地の中に溶け込んでいるのもなんだか不思議な感じです。

 部屋の誕生は、今からちょうど30年前。

 1993年の春、折しも土俵は若貴ブームで空前の盛り上がりを見せる中、前年引退したばかりの元横綱・旭富士が同郷(青森)の先輩の跡を継ぐかたちで、4代安治川を襲名。現在の伊勢ヶ濱部屋の前身にあたる安治川部屋がスタートしました。それから平成の業師・安美錦(現安治川親方)をはじめ個性的な弟子を育成していきますが、大きな転機となったのは2007年。1929(昭和4)年から続いた名門・伊勢ヶ濱部屋が閉鎖となり、相撲界に衝撃が走ります。しかし同年11月、4代安治川は9代伊勢ヶ濱へと名跡を変更し、安治川部屋も伊勢ヶ濱部屋に改称。まさに「電光石火」の勢いで名門を再興すると、小部屋を経営していた元横綱は、名門部屋、そして一門を率いる総帥として相撲協会の中でも中核を担う存在となっていきます。

 そして「本題」であるこの看板。

 佐々木一郎氏の名著「稽古場物語」によると、名門伊勢ヶ濱を継承した際、かつて「安治川部屋」の看板を揮毫してもらった高名な書家がすでに亡くなっており、そのお弟子さんである坂上洋成氏に揮毫していただいた、とのこと。ちなみに彼が所属しているのは、東京・自由が丘で100年を超える歴史を誇る「書道研究 斯華会」であり、時期的に考えて高名な書家というのは1995年に亡くなった小野之鵞氏ではないかと思われますが、それについては明確な記録は残っておりません。ともあれ、「清楚明快」とされる同会の書風を反映した、クセのないスマートな毛書体が印象的です。

 ちなみに現在の建物はおそらく安治川部屋時代から続くもので、親方の住居も兼任。伊勢ヶ濱部屋に改称して間もない2009年に改装されており、地下には本格的なトレーニングルームも備えているそう。外観からは本当に普通の一般的な住居にしか見えないので、この本格的な相撲部屋看板とのコントラストがなんとも妙味。実際、相撲に関しては厳しい親方ですが、同時にふと見せる弟子へのまなざしは深い愛情に満ちており、「平成の名伯楽」の居はそんな彼の生き様を象徴しているかのようです。

相撲部屋「看板」紀行
其の14 伊勢ヶ濱部屋(東京・住吉)
9代伊勢ヶ濱は現役時代は「津軽なまこ」と呼ばれるほどの高い身体能力をベースにした「天才肌」であり、また「のんびりしてそう」な風貌ゆえ「稽古嫌い」というレッテルを貼られたことも(後年その説は否定されている)。ちなみに親方になり今ではちょい強面なシブイ親父に変貌、10年代後半の大相撲SNS界隈では「組長」という愛称で親しまれていた。現役当時を知るファンからは隔世の感。

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日々徒然に、書いていけたらと思います。

好きなものは鉄道(乗り鉄)と大相撲、ときどき料理です。
宜しければリュクスな立ち話の寄り道にぜひ。

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