急速な世代交代が進む相撲界。それは土俵の上だけではありません。
現理事長である八角親方(元横綱北勝海)を筆頭に、現在の相撲協会で中核を担うのは「昭和末期」、いわゆる若貴ブーム以前に全盛期を迎えていた親方衆が中心。しかし彼らもあと数年で定年(相撲協会的には「停年」と呼ぶのですが)となり、いよいよ「若貴世代」が幹部クラスになっていく・・・はずでした。しかしすでに相撲協会には若貴もライバル曙もおらず、どちらかというと彼らのひとつ下の世代である元大関・千代大海の九重親方らが「次世代」と目されています。
そんな背景の中、本日紹介する「浅香山部屋(あさかやまべや)」の師匠を務める15代浅香山、あの人気大関・魁皇は、数少ない相撲協会に乗っている「若貴世代」。前述の3横綱とは同期生であり、現役時代からその人望も抜群。将来的には、昨日のブログで触れた「伊勢ヶ濱一門」を率いていく筆頭候補とも噂されています。
彼が内弟子2人とともに、所属する友綱部屋を分家独立するかたちで浅香山部屋を81年ぶりに「再興」したのは2014年。当時は簡易的な看板が掲げられており、今でもWikipediaにその画像が残っています。いわゆる「相撲字っぽい」デジタルな書体で味気ないものでしたが、独立の翌年、2015年に現在の看板に架け替えられました。揮毫された人物は特定されていませんが、文字を崩すことなく、ボリューム感のあるきっちりとした楷書体で書かれており、親方のファニーかつ実直な人となりを象徴しているかのよう。木材も明るめのものがチョイスされており、こちらも明るい性格を反映している・・・とまでは考えすぎでしょうが、本当に「魁皇らしいなあ」と感じられる看板だとおもいます。
部屋の創設から早や10年目を迎え、部屋も親方自身もこれからがまさに正念場。
いち相撲ファンとして、あの平成の名大関のDNAを引き継ぐ弟子たちが、幕内の土俵で活躍してくれることを楽しみに待っています。
相撲部屋「看板」紀行
其の15 浅香山部屋(東京・錦糸町)
魁皇、と言えばその愛らしい笑顔とは裏腹に?「怪力」と「酒豪」の逸話が豊富な力士であり、現役時代にりんごを簡単に片手で潰していたエピソードはあまりに有名。そして奥さんは元プロレスラーで、自伝のタイトルはずばり「怪力」。「強くてやさしいお相撲さん」を地でいく、ある意味稀有な存在。