カテゴリー

- blog


タグ

- fashion

- blog

  • インスタボタン
  • Twitterボタン

ともに歩んで、三代目。~相撲部屋「看板」紀行 其の22 荒汐部屋

アバター画像2023.07.24 12:00

 猛暑にも負けない熱戦の末、昨日千秋楽を迎えた大相撲名古屋場所。

 場所前から「史上初の三人同時大関昇進なるか?」というのも話題となっていましたが、その三関脇のうちのひとり、若元春関が所属するのが、国技館からも徒歩圏内の東京・浜町にある「荒汐部屋(あらしおべや)」です。

 看板のサイズめいっぱいに、力強く揮毫された「書」は、日本の書道界を代表する重鎮、近藤江南氏によるもので、部屋の創設者である先代師匠の8代荒汐(元小結・大豊)とは、「長男(元は力士)の書道の先生だった」という縁だそうです。独立して部屋を構えた際に看板を設置した2002年以降、2010年、2018年と計3回にわたり同じ書家の手で「新調」されているという珍しいケース。後述しますが、非常に情に厚い先代を象徴するエピソードの一端と言えるかもしれません。

 かつての看板の画像は今もWikipediaなどで確認することができますが、サイズの違いは多少あれど、同じ書家によるものということでそこまで大きく変化してはいません。しいて言えば三代目のほうがより力強さを増しているという印象でしょうか。ゆったりと、なめらかなに流れるような悠然たる筆致は、他の相撲部屋の看板とはまたひと味違う「個性」を発揮している作品です。

 現在は先代の弟子であった内モンゴル出身の元前頭・蒼国来が9代荒汐として跡を継いでいるのですが、彼を語るうえで避けては通れないのが2011年の大相撲八百長問題。多くの力士の関与が発覚し引退や解雇が続出する異例辞退の中、蒼国来も八百長相撲に関与した疑いがあるとして日本相撲協会を解雇されてしまいます。しかし彼は無実を訴え裁判を起こし、実に約2年の闘争の末、協会相手に「勝訴」。これまでに前例のない「一度解雇された力士が、幕内の力士として復帰する」というドラマチックな展開となりました。弟子の無実を信じていた先代荒汐は、解雇期間中も陰日向にサポートを続け、復帰への道を支えていたそうです。そして、そんな蒼国来が2020年に引退する際、師匠は「荒汐」の名跡と部屋をそのまま愛弟子に譲り、自身は停年の2日前に協会を退職。弟子のことを一番に思う潔い引き際に、思わず感涙した相撲ファンは少なくありません。

 若き師匠のもと、前述の若元春を部屋頭に、怪我からの復帰を目指す弟の若隆景や関取経験者の荒篤山、そして弟である若元春(次男)や若隆景(三男)に続き関取昇進に向け奮闘を続ける「大波三兄弟」の長男・若隆元ら、先代から続く篤実な力士たちが数多く集う荒汐部屋。さらにどんなドラマが生まれゆくのか・・・来場所以降も、期待が膨らむ一方です。

相撲部屋「看板」紀行
其の22 荒汐部屋(東京・浜町)

先代荒汐が創設した部屋の建物は、もともと染物屋だったとのこと。1階の稽古場は以前倉庫だった場所を改築したのだとか。かつては部屋で飼っていた2匹の猫「モル」と「ムギ」が人気となり、写真集まで出版されるなど、実はなにかとサイドストーリーには事欠かない部屋でもある。

アバター画像

日々徒然に、書いていけたらと思います。

好きなものは鉄道(乗り鉄)と大相撲、ときどき料理です。
宜しければリュクスな立ち話の寄り道にぜひ。

関連カテゴリ記事

カテゴリー

- blog


タグ

- fashion

- blog