20世紀最後の年、2000年1月に地元住民からの強い後押しもあり「復刻」された、東急田園都市線「田園調布」駅の旧駅舎。
写真で紹介されるときは「明るい時間帯」に撮影されたものが大半なので、どちらかというとファニーな風合いのイメージが強かったのですが、日が落ちてから訪れるとイメージが一変します。夜のほうが、よりクラシックな風合いが増すので、個人的にはこっちのほうが断然好みです。
田園調布駅の旧駅舎は、1923(大正12)年に建設されたもので、当時の駅名は「調布駅」だったそうです。建設当時の資料はわずかしか残っていないため、詳細ははっきりしないようですが、この独特な屋根のデザインは、ヨーロッパ中世期の民家からインスパイアされたものなのだとか。もともと、パリ・エトワール凱旋門周辺の放射線状に広がる街をイメージしてつくられた「田園調布」という街にはぴったりのシンボルだったのでしょう。地元住民に長らく愛されながら、東急線の輸送力強化という事情も背景にあり、残念ながら1990(平成2)年に解体。その後、復活を願い声にも後押しされるかたちで、現在の復刻駅舎が誕生しました。
復刻した旧駅舎自体はあくまでシンボルであり、今は実際の駅舎として使われているわけではないのですが、それでも西口方面から駅前広場に向かう際、この門を通っていく生活動線はしっかりと生きています。
ほんの一瞬、タイムスリップしたかのような錯覚にも陥る、宵闇の旧駅舎。
お近くにお立ち寄りの際は、日没後にぜひ。