長年「たまプラ」の略称で親しまれている、東急田園都市線の「たまプラーザ」駅。
1966年に開業した当初、多摩川(あるいは多摩地方)の「たま」、そしてスペイン語で広場を意味する「プラーザ」というハイカラな駅名は耳目を集め、最近で言うならあの「高輪ゲートウェイ」に通じる日本語+外国語(外来語)駅名の嚆矢ともなった存在です。昭和の時代、マダム憧れの地やお洒落な街として都心ではもちろん、地方の方にも知名度の高い駅のひとつでした。
しかし、実は開業前、この駅には「元石川町」駅という、非常にシンプルな駅名が付けられる予定でした。それを覆したのは、東急電鉄生みの親でもある五島慶太氏の長男であり、当時同社社長を務めていた五島昇氏の鶴の一声であった・・・と伝わっています。確かにもしも「元石川町」のままであったなら、近隣の雰囲気も今とはだいぶ違っていたのかもしれません。ちなみに「たまプラーザ」駅の開業から3年後には、周辺の地名も「元石川町」から「美しが丘」に改称されています。
さて、たまプラーザ駅は2006年から再開発が進められ、今では三層吹き抜けのダイナミックかつ近代的な空間へと生まれ変わりました。縦に吹き抜けていく構造は同じころ、安藤忠雄氏による東急渋谷駅でも見られましたが、地下空間に設えられた渋谷と違い、自然光をダイレクトに取り入れていることもあり、イメージとしてはこちらのほうがより明るい印象に映ります。
個人的に好きなのが、駅のホームから見えるこの開口部。開放感がありつつもどこか可愛らしい、ぽっかりと開いた不思議な空間です。地上にそびえるショッピングモールのような駅舎もかっこいいのですが、目立たないけどちょっとリュクスなこの佇まいに惹かれてみたり。