相撲の決まり手に「肩透かし(かたすかし)」という技があります。
一般的な意味合いから名前だけ聞くとなんとなくネガティブな印象にもとらえられがちですが、実際には相手の力を利用しながら決める高難度な技術(日本相撲協会公式サイトによれば「差し手で相手の腕のつけねを抱えるか、わきに引っかけるようにして前に引き、体を開きながらもう一方の手で相手の肩などを叩いて引き倒して」決める技とのこと。カギカッコ部分は引用)。過去にも数々の使い手がいましたが、歴戦の力士たちも顔負けなほどに「肩透かしの名手」として相撲ファンを唸らせているのが、今回ご紹介する「翠富士(みどりふじ)」関です。
さてその四股名、「富士」は以前にもご紹介した熱海富士関と同じく伊勢ヶ濱部屋の所属のため、師匠の現役時代の四股名である「旭富士」からとったもの。では「翠(みどり)」はというと、古くから東洋や中南米で人気の高い深緑色の美しい宝石「翡翠(ヒスイ、英名はJade)」から採用されたとのことです。これは「磨けば磨くほど光る」という意味が込められており、期せずしてひとつの技を磨き続ける彼にはピッタリとも言えるネーミングとなっています。
一説には出身地の静岡県焼津市から「焼津富士」の四股名も検討されたそうですが、「焼ける」という字が縁起が悪いとのことでストップがかかったとのこと。これはこれで地元に根差した力士らしい四股名だなあと思うのですが、今となっては「翠富士」のほうが彼のイメージには合っているかもしれませんね。
現在開催中の大相撲九州場所では西前頭5枚目。大勝すればギリギリ夢の新三役に届く地位につけています。翡翠のごとく、今場所もその妙技が冴えわたるのか、ぜひ注目です!