おすもうさんと一括りに言っても、実にいろんな人がいるもので、「気は優しくて力持ち」を地でいく「いい人」もいれば、力士というより格闘家向きなんじゃないかという闘争心バリバリの人もいます。しかし、大相撲というのは学生相撲などとは違い「国技」としての性格上、あまり本人のパーソナリティを土俵の上で出すのを良しとしないので、観戦していてもなかなか「素の性格」までは見えてこないものです。
そんな中にあって、おそらく今幕内の中でもっとも「素顔」のまま土俵に上がっている(あくまで個人的見解ですが・・・)珍しい力士なんじゃないかと思うのが、元大関の正代(しょうだい)関。
相撲界きっての「ネガティブシンキング」で知られる力士(一説には本人はポジティブとネガティブの中間、という認識とのことですが・・・)。十両昇進時の記者会見で「関取になったら対戦したい力士は?」という記者の質問にぽつり「誰ともやりたくありません・・・」と答え、隣にいた親方から「バカじゃないのか。酒でも飲んでいけよ!」と突っ込まれていたのは有名な話。その後、大関にまで上がるくらいですからもちろん力のある力士なのですが、大一番では気迫を全面に押し出す力士も多い中、どんなときでもその飄々とした感じの土俵態度は逆に目を惹く存在でもあります。確かに最初のほうは「ああー、もう、じれったい!」と思ったこともありましたが、一周回って今や「いや、正代はこれでいいんだよ」と思わせてくれる、なんとも不思議なキャラクターの力士です。
熊本県出身の正代関は、大相撲九州場所ではまさにご当所。来年こそは大関復帰なるか、これからの奮起に期待です。