本来のスポーティやカジュアルな印象から一転、ここ最近はよりエレガントで高級志向ないわゆる「ラグジュアリーダウン」が注目を集めています。そしてそんな彼らの魅力の一端に触れることができる鍵が実は内側の「タグ」にあることをご存知ですか？ 今回はラグジュアリーダウンの代表格である３ブランドのタグにフォーカスし、その小さな世界に秘められた物語をご紹介したいと思います。
「作り手からのメッセージ」がそこに。～HERNO（ヘルノ）
サルトリア仕立ての職人技を機能美にすぐれたダウンで表現する「HERNO（ヘルノ）」。
1948年、イタリア北西部の小さな町レーザにて、レインコート会社の社員であったジュゼッペ・マレンツィ氏が、自ら開発した完全防水コートの成功を足掛かりに独立。工房用に購入した古い工場があったエルノ川から「HERNO（ヘルノ）」と名づけられ、ブランドの歴史が始まりました。冬の寒さが厳しく、夏は避暑地として人気がある地域環境から、長らく防水性や防寒性に優れたウエアを得意としてきましたが、2008年に発表した約200ｇの超軽量ダウンが世界中で話題に。その後もクラシコな世界観に最先端のハイテク素材を融合したプロダクトを続々と発表、先進性にすぐれた、シーンをリードする存在となっています。
そんなヘルノの中で高い人気を誇るのが、究極の「超軽量」ダウンを用いた革新的シリーズ「HERNO LEGEND（ヘルノレジェンド）」。
そのダウンウエアの裏地部分には、このようなタグが縫い付けられています。
2018年秋冬からスタートした「HERNO LEGEND」シリーズ。実はそのフォルムは、ジャケットやコート、ジレなど、ヘルノが考える「男性のワードローブに必要な11着」からインスパイアされています。そしてそのモデル名は「LA PANCIOTTO（ウェストコート）」など、インスパイア元となったアウターを「イタリア語」表記にした名称。そんなこだわりを示すように、タグにはその「命名にまつわるストーリー」がびっしりと掲載されています。当然、全文イタリア語なので、辞書を片手にその物語をゆっくりと紐解いていくのもダウンのリュクスな愉しみ方のひとつかもしれません。
このダウンは、どれほどの「寒さ」に耐えられるか。～MOORER（ムーレー）
メイドインイタリーにこだわるラグジュアリーダウンの最高峰「MOORER（ムーレー）」。
1999年、母親が経営するダウン製造会社に勤務していたモレーノ・ファチンカーニ氏が、イタリア・ヴェローナにて「ムーレー社」を創業。メイドインイタリーにこだわり、国内を中心とする販売を経て、2006年に最高品質のダウンジャケットを志向するブランド「MOORER（ムーレー）」のコレクションを開始しました。その志の通り、主力であるダウンアウターは、中綿に最高レベルのフィルパワーを誇るプルミュールダウンと呼ばれるホワイトグースのみを使用。表地には高密度のテクニカル素材を用い、すべての付属品を手作業により取り付けるなど、厳格な品質管理でも高い信頼を得ています。
そしてムーレーのダウンは、そのダウンの「充填量」でレベルが分かれているのも特徴のひとつ。
その情報が、左胸内側のタグに記載されています。
まずタグの下部分に「THERMAL INSULATION INDEX（対応気温表記）」という名称で、それぞれHIGH／MIDIUM／LOW（COMFORT）と「着用に快適な気温帯」が3段階設定されています。上の写真の例でいくと、「5℃～氷点下25℃」がHIGH COMFORT（最も快適な気温帯）。つまり、マイナス25℃の環境までは「快適に」着こなすことができる、という証明になります。そしてこのムーレーが独自に設定している基準に基づき、すべてのダウンが「A～D」の4段階にランクづけられているのです。ダウンを選ぶとき、着こなしたい環境やシチュエーションに応じて、参考にしてみてはいかがでしょうか。
普段は隠された「ダウンの中身」を、チラリ。～TATRAS（タトラス）
現在のラグジュアリーダウンブームの先駆者的な存在といえるのが、TATRAS（タトラス）。
2006年にイタリア、ポーランド、日本の3カ国で構成されるワールドワイドなコーポレートブランドとして誕生した「TATRAS（タトラス）」。目が細かく、温かい空気を多く蓄えることができるポーランド産ホワイトグースダウンのウエアを主力としており、ダウン90％／フェザー10％という絶妙な混率、800フィルパワーを誇る抜群の保温性、そして比較的細身に仕上げられた洗練を極めたフォルム、その三位一体が纏う者をエレガンスに満ちた佇まいへと誘ってくれます。
そのこだわりのダウン、どんなものが入っているか、見てみたいと思いませんか？
そう、その中身が「タグ」で確認できるのです！
プラスチック素材などでパッケージングされた、最高級のホワイトグースダウン。ホワイトグースとはその名の通り「純白色をした羽根をまとった水鳥（ガチョウ）」のことを意味しており、寒さ厳しい自然環境で育つことで保温性はもちろん、その嵩や軽量性においても他の水鳥の羽毛と比べて格段に優れた品質を誇っています。艶やかな表地の下に隠された美しい姿の一端を垣間見えることがででき、またそれはタトラスが確かな自信と誇りをもってこのダウンを世に送り出しているという、その何よりの証左であると言えるのではないでしょうか。
